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あの頃と変わらない

 居合の稽古後、すだ公民館長宅で二人で飲む。懐かしさを感じる宅飲みであり、もう大人だからと言いつつも、結局へべれけになるまで飲んでしまうあたりは、「あの頃」と変わらない。
 話のネタは居合(もうすぐ大会がある)から、教育基本法「改正」問題と幅広かった。
そして、まだ酔いも醒めぬまま眼にした今朝の朝刊の一面は、ご存じの通りである――。

   ■  ■

 すだっちによれば、学校現場では教基法改定の問題はそれほど強い問題意識をもって受けとられていないという。たしかに現場の日常において重要な問題は、子どもの学習到達度(「学力」)や教育内容をめぐる具体的な議論であり、教基法の理念を常に念頭において日々の実践を展開している教員はほとんどいないだろう。毎日の授業、生活指導に追われ、教基法まで気が回らないというのが現場の状況なのかもしれない。

 とはいえ、やはりこの「改正」論議には、危機感を感じざるを得ない。「国を愛する心」「国を大切にする心」(「愛国心」でも別に変わりはないと思うが)といった抽象的な徳目を法律に盛り込むことが、恣意的な解釈の下で統制の凶器として利用される可能性があるからである(すでに東京都などでは、儀式への同調というかたちで統制が具体化されている)。道徳が法や制度と同一視され、人間の内面的規範としての固有性を失い、単に外面的に順応すべき行為の枠組みと化す。そのため「たてまえ」と「ほんね」を使い分ける偽善的態度が国民を支配する。それは戦前の天皇信仰と同じ構造ではないか。

   ■  ■

 2002年に教育基本法「改正」問題を考えるシンポジウム(「教育基本法改正問題を考える―中教審『中間報告』の検討―」、2002年12月7日、於:明治大学)に参加したことがあった。
以下は、パネリストの一人であった竹内常一氏の報告(「教育の病理と教育基本法」)について自分がメモしたものの一部である。竹内氏の本や論文には個人的に刺激を受けることが多く、このときの報告も強く印象に残っている(もちろん、他のパネリストの主張も大いに刺激的だった)。

 竹内氏は、これまでの「教育改革」論議がくり返し子どもの問題行動や教育の荒廃を「改革」を必要とする理由としてきたことに疑問を呈する。すなわち、子どもの問題、教育の荒廃が問題視されたここ30年の間に、「改革」論議では子どもは一貫して批難・誹りの対象であり、彼らが何を訴えているのかを解読する作業についてはなされてこなかったことを問題視する。「教育改革」にまず求められることは、この30年間の「改革」についての自己評価を行うこと、それを怠って、教育基本法の見直しを提言するのは本末転倒であると氏は主張した。
 また竹内氏は、これまでの「教育改革」が、教育基本法の理念を一貫してすりかえてきたことを指摘した。第一条「教育の目的」条項についていえば、例えば、これまでの「教育改革」論議では「平和的な国家及び社会の形成者」は別のものにすりかえられてきたという(「平和的な国家及び社会の形成者」→「国家、社会の一員」「国家社会の構成員」→「たくましい日本人の形成」、とくに「平和的な」の部分は徹底的に切り捨てられてきた)。
 これまでの教育政策・「教育改革」は子どもの人格=個性の発達を能力主義的・国家主義的な秩序に閉ざしていくことはあっても「平和的な国家及び社会の形成者」へと開いていくものではなかった、と氏は捉える。そのため、子どもが身体症状や暴力を通じて訴えてきたことは聞き取られることがなく、また、子どもの問題を子どもに返し、子ども自身の手で解決するように支援することもなかった。つまり、「教育改革」は子どもたちに対して、「子どもの権利」を行使して、これらを解決し、民主的な公共性を立ち上げていくことを呼びかけなかったことが問題視される。子どもの問題や教育の荒廃を解決するためにいま必要とされるのは、基本法改正ではなく、子どもを「平和的な国家及び社会の形成者」に教育する「普通教育」を創造すること、この文脈のもとで子ども一人ひとりの人格=個性の発達を最大限保障する「普通教育」を創造することと氏は主張した。

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