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ぶらりサイエンスの旅

 東北大学では昨年度から「サイエンスカフェ」(*)という試みを展開している。キャッチコピーは「仕事帰りに、放課後に、街角サイエンス」。
 私たちのくらしと密接な関係をもつサイエンスの研究成果を広く市民へ向けて発信するものであり、国立大学法人となった東北大学の新しい社会貢献の一環として位置づくものである。
 *1998年にイギリスで始まり、現在欧米では急速に普及しつつある。

このサイエンスカフェは、従来の講演会などとは異なる、おもしろい特徴をもつ。

(1)結論を出すことを目的とせず、科学技術をいろいろな角度から眺めて議論し、双方向のコミュニケーションを図り、文化としてのサイエンスを楽しむ。
(2)議論が活発になるように、また研究者と市民の交流を深める場として比較的小規模でかつ対面的なコミュニケーションの場を演出する。
(3)大学という閉空間から飛び出し、市民にとって身近な場所で開催することによって旧来のアカデミックな枠を打ち破る。
(4)現在まさに研究が進行中の最先端の科学技術に関する話題について、その研究を進めている当人が話すことによって研究段階で市民の反応を知り、これからの社会が必要とする科学技術に対するイマジネーションを高める。
(5)大学生、高校生などの若い世代が、未来の社会の担い手にふさわしい科学技術に対する知識を獲得し、興味を育てる場として活用する。(欧米のサイエンスカフェにはない特徴)

研究者と市民の関係を、従来の送り手・受け手の関係から、双方向で自由なコミュニケーション的関係へと転換するというのが、この事業の魅力となっている。しかも予約もお金も必要ない。「ぶらりサイエンスの旅」(なんだかなぁ)である。

 昨日このサイエンスカフェ(第9回)に参加してきた。といっても市民としてではなく、運営する側のスタッフとしてである。その理由は来月(第10回)の担当講師がウチの指導教員であり、自分は設営・実行のリーダーになってしまったため、場の雰囲気を含め、全体の流れを一度経験しておく必要があったからである。
 キツかった。いきなりファシリテーターの係を担当することになってしまった。ファシリテーターとは各テーブルに付いて、ムードと議論を盛り上げる係のことを指す。カフェにおける講演の時間は30分ほどと少ない(今回は講師が二人だったので1時間)。あとの1時間は各テーブルで市民の方々と研究に勤しんでいるファシリテーター(学生)とが語り合ったり、講演者に直接質問をぶつけたりする交流(「双方向コミュニケーション」)の時間となっている。これがこのカフェの最大の売りといえるだろう。だが、そのためには、ファシリテーターにある程度の器量が求められる必要がでてくる。
 果たして専門外の自分がこなせる仕事だったのだろうか。幸い、自分のテーブルに来られた市民の方々は、みなまじめな定連の方ばかりで、自分が牽引しなくても積極的に議論をしてくださった。
 むしろ、こちらが勉強させて頂いた。社会科学は、我々の生活現実とどう切り結ぶことができるのか、講演の内容が日常の世界でどう生きてくるのか、といった社会科学者が常に念頭に置くべき貴重な意見を頂戴した。

  ■  ■

 カフェへの参加を通して、重要なポイントをおぼろげながら考えることができた。
 重要なことは、何か新しい情報を提供する点にあるのではなく、日常世界でおこる問題をどうしたら科学的に追求できるか、そのきっかけ(ものごとを見る眼)を参加者に提供する点にある、ということ。何か教えるというよりも、参加者がうまく考えられるように仕向けるといっていいかもしれない。
 目新しい研究動向を知ることは、それはそれで参加者にとっては楽しい。しかし、参加者はそれだけを求めているのではない(それは、ともすると注入的で一方向的な講演である)。また、わずかな時間で最先端科学の中身を隅から隅まで理解できるというものでもないはずである(自分のように)。
 講演を通して、自分の身の回りで起こっている事柄への意識が少しでも変わる(身につまされて知る)。物事(自然・社会事象)を見る眼が変わる。
 カフェ成功の鍵はそこにあるのではないか。それは、講演者の力量はもちろん、ファシリテーターにも工夫が求められる難題ではある。とりわけ、参加者の意見を引きだし、ときに示唆を与えるといった、議論の舵取りがファシリテーターには求められる。最低でも、参加者のみなさんが自由にふるまう機会をつぶしてしまわないよう配慮する必要がある(発言者が特定の人に偏らないように、また無理に発言させないように)。

  ■  ■

 さて、たいへんだ。今回の参加者は100名近くはいた。次回も同じくらいの参加者が望めるかどうかはわからないが、第1回から参加されている定連の方もかなりの割合でいたと推定されるので、相当数のスタッフ(30名程度)を確保して、臨まなければならないことは確認できた。
 来月までは地獄の日々……。

   
※サイエンスカフェの詳しい内容は、ホームページからどうぞ。
http://www.sci.tohoku.ac.jp/cafe/

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