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「ニセ科学」の力を借りた徳目主義

視点・論点「まん延するニセ科学」
※菊池誠さん(大阪大学教授)の提言。「ニセ科学に限らず、良いのか悪いのかといった二分法的思考で、結論だけを求める風潮が、社会に蔓延しつつあるように思います。そうではなく、私たちは、合理的な思考のプロセス、それを大事にするべきなのです」という旨の指摘には激しく同意。
関連して「しゃべらなかったけど大事なこと」(『kikulog』、2006年12月20日)も。


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 ウェブ上で話題になっているので、自分もリンクした。
 番組で菊池さんは、ニセ科学をしつけや道徳と短絡的に結びつけた教育言説、および授業への批判を展開した。問題の一例として、『水からの伝言』に基づいた授業実践事例への指摘がなされた。ソースはすでにウェブ上にはないようなので、自分はその授業の概要を知ることができないのだが、「言葉使いをきちんとしよう」という徳目への自覚を促す(昔ながらの)徳目主義授業の一例だろうと推測する。


 徳目主義は、徳目(学習目標)として設定された(特定の価値的観点から抽象した)言葉や概念について、
①ある特定の事象・事態を提示し(例、水の結晶の出来具合)、
②それを特定の仕方で解釈し、児童生徒に指し示すことで意味を付与する(例、言葉の善し悪しが水の結晶の出来具合に影響する)
事態を指す。その際、その事態をより詳細に把握する作業や、その事態以外の状況と徳目との関連などについては考慮がなされないという特徴がある。あくまで徳目として設定された言葉や概念を、特定の事態の特定の解釈方法から出発して児童生徒に指し示すという事態が徳目主義である(と自分は捉えている)。このような授業では、子どもの思考は思弁的、観念的になりやすい。それだけでなく、ある事象・事態を恣意的に解釈するため、事実との間に齟齬を来す。道徳に科学的根拠を求めれば、当然、その非科学性が批判される。


 『水からの伝言』授業をめぐって展開されている諸々の批判は、道徳の根拠を自然科学、それも「ニセ科学」に求める思考停止への批判といえるが、さらに(上述の推測を前提にすると)、結論ありきの徳目主義に陥っている点を、問題としてあげることができる。「ニセ科学の力を借りた徳目主義」である。
 徳目主義の授業は、子どもにとって、結論が予測できるためつまらない。だから、授業の効果は薄い。が、ともすると、「ニセ科学」による脚色は、子どもの興味を少なからず惹きつけ、非合理的な思考へと向かわせる危険性が想定される。それだけに、『水からの伝言』授業を「授業目標を達成する効果的な教育技術」などと評価するのには、問題がある。


 学校の先生の中には、道徳を個人の「心」の問題に還元し、徳目主義形式の授業を熱心に展開される「善意あふれる」方が、少なからずおられる(『水からの伝言』授業も、そんな熱心な先生方による問題の現れと自分はみている)。同形式授業の問題点を指摘しても、こちらの意図が通じない方々である。この打開方法について、自分は為す術を見つけられていないのが「悩ましい」ところである。


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〈「ニセ科学」問題関連リンク〉

・ニセ科学入門
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/nisekagaku/nisekagaku_nyumon.html
菊池誠さんによる「ニセ科学」への考察。


・疑似科学・トンデモについて知るためのリンク集
http://homepage3.nifty.com/boumurou/tondemo/link.html


・水からの伝言を信じないでください
http://www.gakushuin.ac.jp/~881791/fs/

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コメント

TOSSの授業案の一例、web魚拓をとってあります。どーぞ↓
http://megalodon.jp/?url=http://www5a.biglobe.ne.jp/~matsuo-k/mizushidoann.htm&date=20061115235525

投稿: とおりすがり | 2006/12/23 14:44

ありがとうございます。
「心」を誘導する巧みさに笑ってしまいました。
 授業の例に肖って、自分も炊きたてのごはんに「ありがとう」と言ってみよう。何しろ、古い炊飯器を使っているものですから、おいしく炊けなくて。
―どうせなら、炊くときにどんな種類の「水」(軟水、硬水、水道水…)をどれくらいの比率で使って炊くと(お米を作った人に「ありがとう」と言わずにはおれないくらい)おいしく炊けるのかとか、そんなことを知りたい―

「言葉(礼儀)の大切さを知る」ためなら、それが効果を発揮する(した)、具体的な人間同士のコミュニケーションの場面をもってきたほうがよいはずなのですが、なあ何というか…。

投稿: タカキ | 2006/12/23 18:43

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