« [土ログ]城山三郎さん逝く | トップページ | [土ログ]教育学の混迷 »

「状況の力」の恐ろしさ、悪の平凡さ

土曜深夜にテレビで放送していた映画es[エス]は、すごい映画だった。
1971年、スタンフォード大学で行われたある心理学実験の顛末を題材として、ドイツ人がドイツを舞台に映画化した。

 「模範刑務所で2週間の心理実験。報酬は4000マルク」
大学施設内に用意された模擬刑務所のなかで、募集で集められた被験者たちが看守と囚人に分かれ、2週間を過ごす。実験の内容はそのようなものであった。しかし、数日も経たずに被験者たちの様子は一変し、非人間的でおぞましい惨劇へと向かっていく―。
 映画は、実験の結果を忠実に再現しているというが、にわかには信じがたいほど、その詳細は残酷である。しかも、看守(役)も囚人(役)も、募集で集められたごくごく「普通の人たち」である。その「普通の人たち」がいつしか与えられた役割を務めるうちに「人格」を支配され(しかも自分では気づかない。むしろ積極的にその状況に寄り添っていく)、「状況の力」の前に服従・順応していく。そして、その支配に対して弱者である囚人(役)から抵抗が行われるとき、「状況」は残酷さを加速させてゆく。
 「悪の平凡さ」という言葉の意味を、この映画は教えてくれる。

 この作品がドイツ人の手によって描かれたのは大きい。その点こそが、実は、この映画の最も重要なポイントなのかもしれない。ナチズムの歴史を想起せずにはいられないからである(しかし、映画のなかでナチズムに言及するシーンは、ほんの一瞬しかない)。ドイツの懐の深さを感じる。
 この作品を日本版として(我が事として)映画化できるだろうか……。

|

« [土ログ]城山三郎さん逝く | トップページ | [土ログ]教育学の混迷 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69457/14415675

この記事へのトラックバック一覧です: 「状況の力」の恐ろしさ、悪の平凡さ:

« [土ログ]城山三郎さん逝く | トップページ | [土ログ]教育学の混迷 »