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奇抜なフィクションとリアルな実感

 山田悠介『リアル鬼ごっこ』(幻冬舎文庫、2004年)を読む。
なにしろ、帯文の言葉がすごい。

  「全国500万の〈佐藤〉姓を皆殺しにせよ!」。

〈佐藤〉姓の一人として、手に取らずにはいられない。
「西暦三〇〇〇年、人口約一億人、医療技術や科学技術、そして、機械技術までがかつてないほど発達し、他の国に比べると全ての面でトップクラスであるこの王国で、“佐藤”姓という姓を持った人口はついに五百万人を突破した。二十人に一人が“佐藤”というこの時代」という舞台設定。そして、同姓であることが気にくわないという王様の気まぐれによって、国をあげた“佐藤”姓抹殺ゲーム、“リアル鬼ごっこ”が開始される……

 あまりに奇抜な設定だが、自分たちが住む現実の世界の不条理と何ら変わらない、共通の問題構造をストーリーの中に見出すことができる。一人の権力者の無謀な発想に、「ふざけてる」と文句をつき、あきれつつも、最終的にはそれに付き従ってしまう。自分と何ら変わらない隣人が〈佐藤〉というだけで、殺戮に巻き込まれても、傍観者的態度に終始し、一週間というゲーム実施期間の最後まで不条理なルールを守る国民。そして、最終的に行動(国王への報復)を起こすのは、愛すべきものを失った極限状態の当事者であること。
 奇抜な設定のフィクション=鮮やかな視点であるがゆえに、むしろリアルな実感をもって多くの読者に迫ってくる作品だ。

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