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恐るべき「善意」

 斎藤貴男「緊急ルポ プリンスホテルの恐るべき『善意』 ルーティンワークが自由を殺す」『世界』2008年4月号(no.777)を読む。じつに刺激的な論考だった。例の、グランドプリンスホテル新高輪による、日本教職員組合の教研集会・全体集会「会場使用拒否」問題についてのルポである。最近の映画『靖国』上映中止問題にも見られるように企業の「事なかれ主義」が顕在化している昨今、このルポを読んで問題の深刻さを痛感せずにはいられなかった(ホテル側の会見の様子を読んでも、日教組を顧客としてすら扱っていない差別的対応がうかがえる。「ホテル・ルワンダ」とは大違いである―と思ったら、すでに内田樹氏が『ホテル・ルワンダ』を取り上げつつ同問題を論じていた)。

 ホテル・会場の位置や敷地などをインターネットを経由して見ながら、ホテル側の説明「受験シーズン」「周囲に迷惑がかかる」がどうにも腑に落ちないでいた。ルポの次の文章は、その「善意」の疑わしさを明確に衝いている。

プリンス側の言い分そのものも、疑わしくないか。会場周辺もプリンスホテルの広大な私有地なのだから、警察はむしろ有効な警備態勢が敷きやすい。万が一にも病人や受験生に被害を及ぼして、本気で警察の面子を失わせたらどういう報復が待ち受けているのかを、街宣車の主たちはよく知っている。
 しかも会場の目と鼻の先にはロシア通商代表部が立地していた。ということは、日教組側は後になって知ったことだが、この一帯は「国会議事堂周辺地域及び外国公館等周辺地域の静穏の保持に関する法律」によって拡声器の使用が禁じられている。だからこそ、自民党は例年グランドプリンスホテル新高輪で党大会を開くのだ。福田康夫首相が今年一月一七日、“生活重視”の党運営を打ち出したのも、この場所だった。(75-76頁)

 しかも「この種の出来事が、二〇〇八年の日本には珍しくない」(76頁)として、「DV防止講演会を中止したつくばみらい市」の問題なども挙げられている。斎藤氏の最後の指摘が、不気味に響いてくる。

今回の事件がヒントとなって、反権力的な集会や会合を容易に潰すノウハウが確立されていく危険も小さくないと思われる。彼らだけを笑う資格が、しかし、現代の私たちにあるのだろうか。(82頁)

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