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[金ログ]逆襲の「蟹工船」

■「『蟹工船』再脚光…格差嘆き若者共感、増刷で売り上げ5倍」@YOMIURI ONLINE、2008年5月2日。

以下、『蟹工船』(岩波文庫版)より。

「おらア、キット殺されるべよ。」
「ん。んでも、どうせ殺されるッてわかったら、その時アやるよ。」
芝浦の漁夫が、
「ばか!」と、横からどなりつけた。「殺されるッてわかったら? ばかア、いつだ、それア。――今、殺されているんでねえか。小刻みにによ。あいつらはな、じょうずなんだ。ピストルは今にもうつように、いつでも持っているが、なかなかそんなヘマはしないんだ。あれア「手」なんだ。――わかるか。あいつらは、おれたちを殺せば、自分らの方で損するんだ。目的は――ほんとうの目的は、おれたちをウンと働かせて、締め木にかけて、ギイギイ搾り上げてしこたまもうけることなんだ。そいつを今おれたちは毎日やられてるんだ。――どうだ、このめちゃくちゃは。まるで虫に食われている桑の葉のように、おれたちのからだが殺されているんだ。」
   ……
「気の毒だ。それでもまだ一生懸命働いてやろッてんだから。」
「だれが!――しかたねんだべよ。」
芝浦が笑った。「殺される時も、しかたがねえか。」(98-99頁)

「おれたちには、おれたちしか、味方がねえんだな。始めてわかった。」
「帝国軍艦だなんて、大きな事を言ったって大金持ちの手先でねえか、国民の味方? おかしいや、くそ食らえだ!」
   ……
「今度こそ、このまま仕事していたんじゃ、おれたちほんとうに殺されるよ。犠牲者を出さないように全部で、いっしょにサボルことだ。……」
「それでもし駆逐艦を呼んだら、皆で――この時こそ力を合わせて、一人も残らず引き渡されよう! その方がかえって助かるんだ。」
   ……
「ほんとうのこと言えば、そんな先の成算なんて、どうでもいいんだ。――死ぬか、生きるか、だからな。」
「ん、もう一回だ!」

そして、彼らは、立ち上がった。――もう一度!(114-115頁)

  労働者の反抗の叫びを描き、団結を喚起したプロレタリア文学の代表作。これが21世紀の今、リアルな等身大の文学として再評価されていることの意味を十分に受け止める必要がある。
  現代の若者が「殺される」とすら感じている不安が『蟹工船』と共鳴している。

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コメント

突然、失礼いたします。
学生より、名前が出ていると聞いて、当該ページやブログのいくつかを拝読いたしました。
拙論に言及してくださり、とてもうれしく存じます。
同じ教育学の研究・教育をなさっている御様子、しかもブログを拝読しまして、そのシャープな視覚と研究コーパスの広さに敬服いたしました。
今後とも機会がありましたら御教示いただければ幸いです。
唐突で失礼ながら、まずは御礼まで。  久保田貢

※『蟹工船』とは関わりないですが、最近「貧困・格差の再生産を許さない」の特集を組んだ『クレスコ』6月号に「本との対話」コーナーの書評短文を書きました。どこかで見かけましたら、よほどお時間ある折にでも御笑覧いただければ幸いです。

投稿: K | 2008/05/24 12:22

久保田先生

はじめまして。
 勝手に名前を出してしまい、失礼しました(簡単な読書メモで申し訳ありません)。
 備忘録として気軽に書いていたのですが、まさかご本人がいらっしゃるとは思いもしませんでした。

 自分の研究がきちんと自己認識につながっているのか、というつい見失いがちな問題を先生の論文を読んで再認識させられました。こちらこそよろしくご指導ください。

 雑誌の書評短文、ぜひ読ませていただきます。 佐藤タカキ 

投稿: タカキ | 2008/05/25 00:58

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