« 覚えまつがい | トップページ | [本]なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか »

『近頃の若者はなぜダメなのか』を読みながら

 久々に、読書ノートを。

 原田曜平『近頃の若者はなぜダメなのか―携帯世代と「新村社会」―』(光文社新書、2010年)を読む。 「30代以上にはわからない 人間関係の劇的変化」という帯文のコピーに惹かれて、手にとってしまった(30歳以上のおっさんっぷりを発揮してしまった)。
 タイトルだけ読むと、いかにも若者バッシングの本と受け取られかねないのだけど、これはフェイク(意図的か?)。
 そうではなく、「第7章 近頃の若者をなぜダメだと思ってしまうのか?」とあるように、若者に対する「世代論」的認識に基づいて、彼らを批判しがちな現状に対する問題提起の書である(著者は、「この本は表面上、若者本の姿を借りていますが、今の日本人全体を語ったつもりです。/つまり、「世代論」ではなく、「時代論」のつもりで書きました。今、若者の間で怒っている多くの現象は、私たち大人の間でも起こっているのです」[255頁]と述べている)
 巨大なネットワークを駆使できる、「近頃の若者」の可能性についても言及しているという意味では、建設的でもある(「第6章 つながりに目覚めた若者ネットワーカー」)。

 「約7年かけて47都道府県の若者1000人以上に会って話を聞いた、『今の若者のリアルな姿』」を示す各エピソードは、自分も日々大学生と接しているなかで、「うん、うん」と思い当たる節があり、興味深く読めた。巻末の「新村社会を生きる、ある男子大学生(21歳)の1週間、全送受信メール」なんか圧倒される。学(部)生時代は携帯をもたず、周囲から急かされてようやく20代半ばでもちはじめた自分には、まず無理な芸当だ(その頃は、まだ携帯は、まだ〈電話〉としての意味合いが強かったと思う)。
 そして、ケータイの普及をきっかけとする、若者の巨大なネットワーク構築(「知り合い増えすぎ現象」、まさにマイミクなんかがそうだね)と、それを通じた高度なコミュニケーション能力(読空術)発揮の現状を、「新村社会」という分析概念で問題提起しているのも、きわめて興味深い。

 戦後の日本では、個人化、価値観の多様化、核家族化、都市部への人口流入が進み、それに従って、村社会が徐々に廃れていきました。
 しかしここにきて、ケータイの普及をきっかけに、携帯メールやSNSやプロフを媒介に、若者が義務性と継続性のある巨大ネットワークを構築し、その結果、若者たちがお互いの顔色をうかがい、「読空術」により協調性を保たねばならないという、かつて日本にあった村社会のような状況が復活したのです。
 しかも、この〈新しい村社会〉(原文傍点)は、かつての村社会のように拘束力があるうえに、かつての村社会よりも人的規模が圧倒的に大きくなっています。
 私は、この新しい村社会を「新村社会」と名づけました。
 ケータイ悪玉論や、ケータイの学校への持ち込み禁止が叫ばれていますが、いちばん問題なのはケータイそのものではなく、ケータイの「有害サイト」でもなく、ケータイをきっかけに「村社会的な人間関係」が若者の間に復活したことなのです。(93-94頁)

 原田氏は77年生まれ。自分と一歳しか違わない。そんな著者が、ところどころで持ち出している、30代以上の人間が経験した青春期のエピソードには、いちいち共感してしまった。例えば、「きっと高校時代の私だったら、親が寝静まるのを待ち、ドキドキしながら毎日見ていたかもしれません……」[190頁]とか(「何を?」というのは、本書で確認してください)。

      ◇

 「若者はバカになった」「若者の~離れ」的バッシング言説を目にするケースがよくあるのだけど、若者という存在は昔から「バカ」だったわけで(中高年世代より劣るのはあたり前)、むしろ「バカ」と評価される現状が、どのような社会的文脈において起こっているのか(捉えられているのか)、ということを押さえたほうがいい。
  ただ若者を批判し、使い捨てる理屈にするだけで、若者を社会として育て受け入れる責任を放棄する現状容認は、日本の将来に大きな不幸をもたらす。
  自分の勤務校はFランクと言われてもしょうがないところだが、学生の人間関係能力は、決して低いわけではない。
 先日、自分が受け持ったクラスの1年生たちと懇親会の機会を設けたところ、一年間お世話になったお礼ということで花束をもらった(写真)。
 こちらが知らないうちに、彼・彼女らは自分達の力で(ケータイによる)ネットワークを構築し、それを通じてこういったサプライズを、企画していたわけである。
  自分の学生時代には、こんな気の利いたことはできなかった。

  彼らの巧みな連帯力を評価し、大学の正課(勉強)のなかでどう生かしていくべきか。
それが、今の自分に課せられた課題といったところだ。

 もうすぐ、新年度。また、忙しくにぎやかな日々がはじまる―。

100208_215819

|

« 覚えまつがい | トップページ | [本]なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/69457/47943634

この記事へのトラックバック一覧です: 『近頃の若者はなぜダメなのか』を読みながら:

« 覚えまつがい | トップページ | [本]なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか »