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[リンク]国定道徳教育教材『私たちの道徳』

■道徳教育用教材「私たちの道徳について」@文部科学省、2014年2月14日

 文部科学省編『私(わたしたち)たちの道徳』(小学校1・2年生用、小学校3.4年生用、小学校5・6年生用、中学校用の4冊)が、2月14日に公表された。約9億円もかけた代物で、以前の『心(こころ)のノート』と比較して約1.5倍の頁数になっている(中学校の場合、以前の『心のノート』全144頁から私たちの道徳』全240頁に増量。1.666…倍になった。各頁の文字数も増えているので、情報量としてはかなり充実したといえる)。平成26年度から使用する教材として、全国の小中学校に配布される。

 本の冒頭には、お節介にも「家庭で―家の人と話し合いながら」「地域で―地域の人と交流しながら」といった、学校以外での「この本の使い方」が記されている。学校外でも使える教化資料というわけである(でも、うまい使い道あるだろうか?)。

一瞥して、「使いづらい」と、多くの教師は思うのではないか。
そう思える理由はいくつかあるが、私が「これはだめだ」と思ったのは、各トピックの最後にある記入欄だ。「感じたこと、考えたこと(を書いてみましょう)」という欄がある。中学校用だと、この欄(ほんとに簡単に、「感じたこと、考えたこと」とだけ書いてある)が頻繁に登場する。


 私は、担当科目「道徳の指導法」で、「『感じたこと、考えたことはありますか』というのは、一番ダメな発問だ」と学生に注意している。「別に(ない)」と言われれば、それでやりとりが終わってしまうからだ。「道徳は答えがないんだから、何かを感じさえすればよい」という発想は、最終的に「生徒に読ませて終わり、書かせて終わり」「生徒に言わせっぱなし」という「勘違いのオープン・エンド授業」に帰結する。実際、そうなってしまう受講生のレポート(「道徳の時間」の学習指導案)が多かった(その背景にあるのは、指導方法云々ではなく、それ以前の教材研究不足にあるということは以前のエントリでは述べた)。
 そもそも、読み物資料を読んで学べるのは、道徳に関する「文字で学ぶ知識・情報」であって、イコール道徳ということにはならないだろう。
 資料を読んで、とりあえず「何かを感じなければならない」というのなら、生徒はとりあえず頭に浮かんだ言葉を並べてそれで終わってしまう。だが、それでは、生徒の思考や学びが深まる授業にはならない。生徒が「何かを感じる(ある気持ちになる)」、あるいは「何かを考える」ためには、その前段階として「何かを知る」という作業が必要となる。知識と道徳とは、そう単純に切り離して考えられるものではない。
 この点、宇佐美寛氏が何度も述べているように、まずは「多様な事実認識を保障すべき」であって、そのうえでなければ、何かを考えさせることも感じさせることもできない。そして、多様な事実認識を保障するためには、一つの道徳教材・資料の中の世界だけにとどまっていてはいけない。道徳とは本のなかの問題でも心の問題でもなく、われわれが生きる社会の問題である。道徳が「社会的状況における意志決定のあり方」を指すと捉えるならば、本のなかの世界ではなく、現実の社会的状況を詳細に観察することのほうが重要である。
 下村文科相は、「教師が一方的に教えるのではなく、あるべき道徳を子どもに多様な角度から考えさせる内容にした」と、14日の記者会見で語ったようである(『朝日新聞』2月15日)。だが、本当に「多様な角度から考えさせる」ためには、『私たちの道徳』が示すのとは別の、たくさんの視座を、教師がさらなる教材を通して生徒に保障する必要が出てくるだろう。『私たちの道徳』が出されてもなお、まだまだ教師の実践上工夫できる余地がたくさんある(教師の創意工夫なくしては、道徳教育の現状は何ら変わらない)。
 現場の先生方には、この『私たちの道徳』だけに寄りかかった授業だけはしてもらいたくないし、教員養成の現場にいる身として、引き続き学生の教材研究への意識を高める授業を展開していきたい。また大学に身を置く立場として、『私たちの道徳』の内容の検討を深めていく予定である(学生との考察を深めたい)。

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