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『教育』を読む会に学んで

 雑誌『教育』といえば、戦後発刊されて以来、教育(学)界に大きな影響を与えてきた、伝統ある硬派な雑誌である。

自分も学生時代から、暇を見つけては、大学の図書館で記事をチェックしていた。


 じつは約2年前から、勤務先の大学でも雑誌『教育』を読む会を不定期で実施している。まさか大学教員となって、学生とこの雑誌を読みあうことになるとは夢にも思わなかった。
 たしか、浦野学部長の発案で、熱心な学生が結集して始まったと記憶している。
 記録をふり返ってみると、自分が初めて同会に参加したのは、2014年の1月だった。おそらくその前に1回は実施していたはずである。
 実施はひと月に一回程度。試験期間や長期休暇期間などは実施できないことが多いので、年間にできる回数はかなり限られ、1年ほどしかやっていないのではないかと錯覚していた。だがふり返ってみると、細々とではあるが、着々と活動成果を蓄積してきたことになる。


 学生にとっては、かなり敷居の高い読書会ということになるが、参加者の顔ぶれは変わることなく、かつ少しずつ新顔も加わりながらここまで継続してきたことは、特筆すべきことと言ってよい。

 さらにその多くが4月から教員、もしくは(非正規ながら)学校現場に関わる仕事に就く予定であるという現状も喜ばしい(本を読む時間すら取れないという、きわめて問題のある今の教師の現状からみれば、学生時代に教育雑誌を読み込んだというこの経験は、たとえすぐには成果として表われなくとも、やがてこころの奥深くに沈んで、本人の教師としての生き方・成長を下支えするはずである)。

 この4月から小学校教員になる私のゼミ生は、同会の初期からのメンバーであり、これに飽き足らず、一橋大学で毎月開催されている多摩『教育』読者の会にも自主的に参加してきた。
 彼女に誘われて私も参加しはじめているほか、本学の学生も少数ながらこの学外での読書会へと自主的な学びの幅を広げつつある。

 そして、つい先日には、八王子の大学セミナーハウスで合宿を実施、2016年2月号を検討した(これには、多摩読者の会の方々も驚かれていた)。
 もっとも、これは合宿大好きなもう一人の支援教員の発案によるもので、読書会より夜話会がメインという性格が強かったのだけど、それでも従来通り、担当学生がレジュメを切り、論点を提示しながら議論を深めていくというスタイルを貫き、中身の濃い議論をすることができたと思う。

   ◇  ◇  ◇ 

 『教育』を読む会に参加する意義を学生たち自身は、どう考えているのだろう。


 教員があれこれ世話を焼く必要はないのかもしれないが、気にはなるところである。だが、学生たち自身も尋ねられて即座に答えるのは難しいかもしれない。


 「教育といっても、わからないことが多い。だから学んでみようと思った」
「講義のような一方向的な学びでは満足できない(まして、「べき論」ばかりの教職科目の授業はつまらない)」

――といったあたりが、最大公約数的な答えだろう。 


 自分自身とて、何か「〇〇を得よう」という明確な問題意識があって参加しているのではない。

しかし、だからこそ得られるものが多々ある。
 ある学生に、「先生の専攻分野は歴史なのに、なぜこの読書会に参加するのか」と尋ねられたことがあるが、その時は「現代の教育についての問題意識がないと、歴史を捉えることはできないから」と答えた記憶がある(そもそも歴史とは、固定化された不動の過去などではではなく、歴史家が史料と格闘し、解釈した事実の集まりである。
歴史家の現代的課題意識が反映する意味において「すべての歴史は現代史である」 by B.クローチェ)。
 もう少し、(学生にも向けて)補足すると、次のようになる。

「『教育』を読むことを通して得て自ら得た知識や、読書会を通して触発されて考えたことは、日々のニュースや会話のなかで同様の、あるいは類似の教育問題に接したとき、その都度立ち現われてくる。それが、さらに問題について考えるきっかけをくれる。今までなら素通りしてしまっていた問題も、立ち止まって考えることができるようになる。教育史に限らず、およそ教育を研究する者としては“教育を見る眼を鍛える”ために有意義な機会である。」

問題をセンシティブに捉えるための襞は、あればあるほどよい。


「学力テスト体制」「生き凌ぐ技法(アート)」「教育への『行政犯罪』」「シメない教育」……。
学生たちには、それら『教育』のテーマとして設定されたユニークなフレーズを思考のスイッチとしながら、思索を深めてもらえればと願っている。
そして、学びの潜在的欲求を持った新入生たちを巻き込んでほしい。

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